もっと知りたい、時計の話 <Vol. 3> 

さまざまな時計、その素晴らしい機能や仕組み、その時計が生まれた歴史などについて、もっと知って楽しんで頂きたい。 日新堂のそんな想いを込めてお届けするのがこの「もっと知りたい、時計の話」です。

前回は「海外旅行に着けていきたい腕時計」として、2回に渡ってGMTウォッチについてご紹介しました。今回から2回は、やはり海外旅行にぴったりですが、旅に出なくても楽しめる「ワールドタイムウォッチ」のお話です。

●“旅する気分”が楽しめる時計

ワールドタイムウォッチとGMTウォッチは、海外旅行をする人(ワールドトラベラー)のための、いわゆる「トラベルウォッチ」です。どちらも経度15度ごとに世界を24のタイムゾーンに分けて、経度15度ごとに時差1時間を設定するというタイムゾーンのシステムに基づいて作られています。

ただ、その機能は大きく違います。GMTウォッチは2つの異なるタイムゾーンの現在時刻がわかる時計です。 これに対してワールドタイムウォッチは、24時間で文字盤を1回転する24時間ディスクと、その外側に記された世界主要都市名を合わせて読み取ることで、世界の24のタイムゾーンすべての現在時刻が一望できる時計です。 そして24時間ディスクは、朝6時から夕方18時までの部分が「昼」を表す白、18時から朝6時までが「夜」を表す黒に塗り分けられています。これで数字を読まなくても、主要都市がいま「昼なの夜なのか」も、視覚で直感的に知ることもできます。

だから、文字盤を眺めながら、世界中のいろいろな場所に想いを馳せることができる。「あの人の住むニューヨークはいま、朝の6時だな」「思い出のパリはいま、夜の20時か」「一度は行ってみたいあの都市はいま、何時なのかな?」と。

海外旅行に行っても行かなくても、ただ文字盤を眺めるだけで、その気分が楽しめる。こんな時計はワールドタイムウォッチ以外にありません。何ともロマンティックでクールだと思いませんか? もちろん、世界の時刻が一望できるので、世界とビジネスする人にとって便利なのは言うまでもありません。



「機械式時計の魅力をひとりでも多くの人に楽しんでほしい」という想いから、「手の届くラグジュアリー」をコンセプトに1988年に創業した時計ブランド・フレデリック・コンスタントもワールドタイムモデルを開発・発売している。


FREDERIQUE CONSTANT/フレデリック・コンスタント
クラシック ワールドタイマー マニュファクチュール 
FC-718NWWM4H6  533,500円 (税込)


●“世界地図”が文字盤上にあるモデルも

さらにワールドタイムウォッチの中には、この機能にさらに魅力をプラスしたモデルがあります。

地球儀のように文字盤に世界地図が描かれていて、その上にグレーのグラデーションが施された半透明のディスクがあり、どのエリアがいま昼か夜かがわかるもの。クロワゾネ(金線七宝)などの芸術的なエナメル装飾で、立体的で美しい世界地図が文字盤の中央に輝いているものがあります。

その地図も、地球を北極の真上から眺めた正確な地図にして回転させて正確な表示を追求したものや、あくまで装飾としての美しさを追求したものなどさまざまです。

また、地図のメカニズムやデザインに独自の工夫を凝らしたものが数多くあります。この点も、ワールドタイムウォッチの大きな魅力です。


「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2022」に出展。そこで発表された新作ワールドタイムモデルのひとつ。アジア向けで中国やオーストラリア、日本列島やフィリピン列島などがクロワゾネエナメル技法で美しく描かれる。

PATEK PHILIPPE/パテック フィリップ 
Ref.5231 ワールドタイム 
11,209,000円(税込)

●ひとりの天才時計師が考案

ところで“世界の現在時刻が一望できる”このタイプのワールドタイムウォッチのメカニズムは、いつごろ、誰が発明したのでしょうか?

このメカニズムが発明されたのは今からおよそ90年前、1931年のこと。発明者はジュネーブの天才時計師ルイ・コティエ。彼はまず、有名な時計店のために、このメカニズムを搭載した懐中時計を製作します。

その後、コティエはジュネーブの名門パテック フィリップと共に1937年以降、1960年代にかけてこの基本メカニズムを搭載した、今も名作と語り継がれるワールドタイムウォッチを続々と開発します。

文字盤の中央にパテック フィリップが誇る美しいクロワゾネ装飾で世界地図を描いたワールドタイムウォッチはこの過程で生まれました。

そしてパテック フィリップのワールドタイムウォッチは、当時からメカニズムをさらに大きく進化させて、今も同じ基本デザイン、同じ職人技で作り続けられています。時計愛好家ならいつかは手に入れたいと願う憧れのモデルのひとつです。

次回も、パテック フィリップのこのワールドタイムも含めて、日新堂が取り扱っている時計ブランドの製品の中から「ワールドタイムウォッチ」をご紹介します。

※記載の価格は、2022年7月15日現在のものです。