vol.34 銀座でごちそう
和が薫るシチューをいただく
日新堂の近くにある名店や街の魅力をお伝えしたい、そんな想いから生まれた『日新堂マガジン』。喜ばれる手土産やおいしいカフェ、そして街の歴史やちょっとしたトリビアまで、日新堂のお客さまが愉しめる街案内をお届けいたします。
第34回目は、銀座のシチュー専門店をご案内します。
歌舞伎役者が贔屓にする熱々シチュー
銀座は歌舞伎座裏に佇む、昭和初期の蔵をいかした、シチュー専門店「銀之塔」。昭和三十(1955)年に銀座四丁目に店を開いて七十年、創業当時と変わらずシチューとグラタンのみの品書きで商いを続けています。多くの歌舞伎役者に愛されてきたシチューは、出前をする際にも熱々で届けられるよう土鍋を器にしています。シチューをご贔屓にしていた十二世市川團十郎丈は、公演中の出前はもちろんのこと、闘病中には病院に取り寄せたというエピソードも。役者はもとより芝居前後に訪れる歌舞伎ファンも多く、開店から閉店までは休みなく店を開けています。また昼も夜も品書きは変わらないため、銀座の買い物や所用帰りに、遅い昼ごはんや早めの夜ごはんを愉しむひとも。
丁寧に下ゆでしたビーフやタン、円筒形にカットされた甘いにんじんやほくほくしたジャガイモが入りのミックスシチュー。フツフツ煮立った土鍋入りのシチューに高揚感も高まる。シチューにあわせる石川県産の白米は、ふっくらと甘味があってお代わりしたくなるおいしさ。ミックスシチューセット/2,950円
一階から三階まで七十席が用意されている。一階の小上がりでビールとともにシチューをいただくのもいい。
ごはんに馴染むさらりとした洋食
看板メニューのシチューは、タン、ビーフ、ミックス、野菜の四種類。一番人気は、箸でほぐれるようなタンとビーフが両方入ったミックスシチューです。味の決め手は、すね肉や香味野菜、ハーブを加えて煮込むドミグラスソース。煮込み寝かしを繰り返し、丹念にアクをすくい三日間かけて完成させています。だからこそ濃厚でありながらさらりと澄んだ味に。ほろりと柔らかなタンやビーフ、甘味のあるにんじんやほっくりしたジャガイモ、味わい深いシチューは、ごはんとあわせていただきます。歯ごたえのあるキンピラや爽やかな紅白ナマスなど、小鉢にも手抜きなし。最後は浅漬けでしめる、まさに和のシチュー御膳です。
秋や冬になると洋食気分が高まるもの。そんなときには和が薫る銀座の洋食店で“熱々なシチュー”をお愉しみください。
かつての金庫の扉を残した趣ある空間が広がる。落ち着いて食事を楽しめるように小上がり以外は、すべてが椅子席になっている。
フランスは鴨料理の名店「トゥール・ダルジャン(銀の塔)」に由来する屋号とともに、店の意匠として季節ごとに架け替える暖簾やステンドグラスには愛らしい鴨が描かれている。
昭和初期に建てられた質屋の蔵を生かした銀之塔。堅牢な窓も当時のまま。
掲載情報は2023年10月のものとなります。料金は税込です。
■DATA■
銀之塔
住所 東京都中央区銀座4-13-6
電話番号 03-3541-6395
営業時間 11:30~20:00(L.O.19:30)
休日 年中無休(年末年始除く)
営業時間・定休日は状況にあわせて急な変更も。お出掛けの際はWebやお電話などにてご確認を。
銀之塔