もっと知りたい時計の話Vol.27
さまざまな時計、その素晴らしい機能や仕組み、その時計が生まれた歴史などについて、もっと知って楽しんで頂きたい。 日新堂のそんな想いを込めてお届けするのがこの「もっと知りたい、時計の話」です。
もう7月だから1年の半分が過ぎた。12月だからもうすぐ1年が終わる。
日本のわたしたちはこんなふうに月を基準にして1年間を考えるのが普通です。ところがヨーロッパやアメリカの人たちは、日本ほど「月」を意識していない、というより、1年間を週単位で考える人が多いようです。
1年間は週単位で考えると52週か53週。第〇週と週番号で表記されます。海外のカレンダーには週番号が表記されているものが多く、日本ではデフォルトでオフになっていますが、多くのスマートフォンのカレンダーアプリでは、週番号の表示ができるようになっています。マイクロソフト社の有名なビジネスソフト「Excel」には、今が年の何週目かを調べることが一瞬でできる「WEEKNUM関数」が用意されています。
Microsoft Excel のWEEKNUM関数の説明(同社サポートページより)
ところでヨーロッパやアメリカの人たちは、なぜ「月」よりも「週」を意識しているのでしょうか。
ヨーロッパやアメリカの人たちが「月」よりも「週」を意識する大きな理由のひとつが「週給制」。ヨーロッパやアメリカでは給与や年金などの公的な給付が月単位ではなく、週単位で行われているからです。
「月給制」が大半の日本では月々の給料日を、また、家賃等さまざまな料金の月々の支払いを意識して生活しています。そして、こうしたお金のやりとりが月末に集中しています。ちょっとお金を使い過ぎて「給料日まであと〇〇日」と考えてお金をやりくりする。そんな経験をお持ちの方も多いことでしょう。
もし、日本でも給料日やさまざまな料金の支払い日が週末だったら、つまり日本が週給制だったら、私たちもたぶん週単位で日々のお金のやりくりを考えると思います。
iPhoneのiOS バージョン16.5.1のカレンダー設定画面と、週番号設定をオンにしたときのカレンダー画面。
では、この「週番号で、週単位で1年間を考える」ことにはどんなメリットがあるのでしょうか?
いちばんのメリット。それは「タスク(仕事)のスケジュール管理のストレスが軽減できる」ということ。これはビジネス関連のノウハウ本やウェブマガジンにもよく紹介されていることです。
最初に「私たち日本人は月単位で1年間を考えている」と言いましたが、実際には私たちは「月単位」ではなく「日単位」で、つまり1年間を365日に細かく分割してスケジュールを考えています。「期限まであと何ヵ月」ではなく、「期限まであと〇日」と考えてスケジュールを作っているのが普通ではないでしょうか。
ではなぜ「日単位」になっているのか。それは1年間を12に分割した、1ヵ月が30日あるいは31日の「月単位でのスケジュール」は大ざっぱ過ぎるからです。
1週間では終わらない、それなりに時間がかかる仕事、特に多くの人が関わるプロジェクトなどでは「日単位」の緻密なスケジュールは、やりたくてもできず計画倒れに終わることが多い。つまり細か過ぎるのです。でも「月単位」と「日単位」の中間の「週単位」なら、大ざっぱ過ぎず細か過ぎず適度な感じで、実行可能なスケジュールを作ることができます。
「この仕事は全部で△△週間の間に、第〇〇週から第□□までに終わらせよう」という風に、週番号を使って「週単位でスケジュールを考える」ようにすることで、仕事の進め方が柔軟に行える、予定の進み遅れを過剰に意識しないで、ストレスを少なくして仕事に取り組めるのです。
実際、海外では「第〇〇週までにこの仕事を完了してください」という仕事の期限の設定は珍しくありません。
「カラトラバ・ウィークリー・カレンダー 5212A」の週番号表示、曜日表示は指針式。左の赤いマーカー付きの針が週番号を示します。
なお、この週番号をよく使うヨーロッパと、アメリカと日本では、なぜか週番号の数え方が違うので、海外とのやりとりで使う方はこの点に注意が必要です。
たとえばヨーロッパ式(ISO式)では「週は月曜日から始まる」という基本的な考え方があり、その年の最初の木曜日が含まれる週が「第1週」とされます。そのため2023年の最初の週である「第1週(WN1)」は1月2日からになり、2023年1月1日は2022年の最後の週、第52週に入ります。
一方「週は日曜日から始まる」という考え方のアメリカ式や日本式では、1月1日が含まれる週がその年の最初の週番号、つまりウィークナンバーの1とされます。このため、2023年の「第1週」は1月1日から1月7日になって、1月8日は第2週になります。
時計の中には、こうした「週番号で、1年間を週単位で考える」生き方に対応した「週番号(Week Number or Calendar Week /ウィークナンバー あるいはカレンダーウィーク)表示のあるカレンダーを搭載した時計も登場しています。日々細かなスケジュールに追われている。そんなストレスを少しでも減らして、もう少し余裕のあるペースで仕事をしたい。そんな人は、週単位の考え方、週番号の入ったカレンダーや、ウイークナンバー表示のある腕時計を使ってみてはどうでしょう。