vol.30 銀座でひるごはん
暑気払いは銀座らしい鰻屋へ
日新堂の近くにある名店や街の魅力をお伝えしたい、そんな想いから生まれた『日新堂マガジン』。喜ばれる手土産やおいしいカフェ、そして街の歴史やちょっとしたトリビアまで、日新堂のお客さまが愉しめる街案内をお届けいたします。
第30回目は、土用の丑に訪ねたい老舗の鰻名店をご案内します。
歴史ある老舗の鰻名店が銀座へ
江戸時代は元禄のころに誕生した鰻のかば焼き。以後三百年にわたって、日本人に愛されてきたご馳走です。夏は売上が鈍る鰻屋に頼まれ“土用の丑は鰻”と、鰻を暑気払いのご馳走にかえたのは江戸の鬼才・平賀源内。諸説はあるようですが、夏の土用の丑が近づくと鰻気分が高まるひとは多いのではないでしょうか。古くは日光街道の宿場町として賑わいをみせた埼玉県の杉戸町。この町で明治初期に創業した「うなぎ割烹 髙橋屋」は、鰻が名物の老舗料亭です。四代目の当代店主は、銀座にふさわしい老舗の味を、と銀座四丁目に「銀座 四代目 髙橋屋」を出店。落ち着いた色合いの漆喰壁、温かみのある楓材のテーブルやカウンター、寛げる革張りの椅子が調和する和モダンな空間で、極上の鰻料理がいただけます。
ルーバー天井や行灯のような照明、美しい組子細工のカウンター、ガラス張りの調理場など、遊びごころ溢れた演出。店主が敬愛する北大路魯山人の作品がさらりと飾られている
うな丼御膳は、肝吸い、小鉢、香物がついている。江戸時代より鰻の薬味である山椒は、ミルで挽く粗びきと細びきの二種類用意。うなぎたれに漬け込んだ卵黄を溶きほぐし、かば焼きにつけると風味が変わりまた愉し。器はすべて作家もの、塗りは輪島で誂えたものが多い。うな丼御膳/5,000円
割きたて蒸したての鰻の味を
「銀座 四代目 髙橋屋」の鰻は、三河一色産。店主の厳しい目にかなった上質な鰻は、仕込み場の大きな桶へと放ち一週間以上は泳がせるそう。きれいな水で泥を吐かせた鰻は、割いてすぐに蒸し、醤油とみりんで仕上げた秘伝のたれをつけて備長炭でパリッと焼きあげます。割きたて蒸したてだから、水分が抜けず鰻本来の旨みを味わえるのだとか。焼きたての鰻は、ふっくらと柔らか。蕩けるような口あたりでひと口ごとに幸せな気分になります。きりりと辛めなたれの鰻をうけとめるのは、粒だちがよくほんのり甘い新潟は塩沢産のはざ掛け米です。一流の鰻には一流の米をと、店主みずから産地と交渉して取り寄せています。通常は関東風のかば焼きですが、割いて焼く関西風の直焼き(じかやき)に対応も。好みや気分で東西の鰻のかば焼きを味わえるのはうれしい限りです。
たれにつけた鰻を焼く香ばしい匂い、焼き上がりのつやつやした姿は、思い浮かべるだけで自然と喉元がうごくもの。今年の土用の丑は、七月三十日です。銀座らしい鰻名店で暑気払いはいかがですか。
たれにつけた鰻を火力が強い備長炭で焼き上げていく。養殖鰻は三河一色産を、天然鰻は滋賀の琵琶湖産を取り寄せている。週末は天然鰻のオーダーも多い。
二面のガラス窓から銀座の景色が取り込まれ、コンパクトながらも開放感がある空間が広がる。夜景を眺めながらゆっくりと食事を愉しみたい。セラーにはグランヴァンや珍しい日本酒が揃う。貸し切りなども応相談。
photo by © takahashiya-ginza
掲載情報は2023年5月のものとなります。料金は税込です。
■DATA■
銀座 四代目 髙橋屋
住所 東京都中央区銀座4-12-1 VORT銀座イーストⅡビル4F
電話番号 03-3547-0021
営業時間 11:00~16:30(L.O.15:00)、17:00~23:00(L.O.21:00)
休日 無休
営業時間・定休日は状況にあわせて急な変更も。お出掛けの際はWebやお電話などにてご確認を。
銀座 四代目 髙橋屋