もっと知りたい、時計の話 <Vol. 2>

さまざまな時計、その素晴らしい機能や仕組み、その時計が生まれた歴史などについて、もっと知って楽しんで頂きたい。 日新堂のそんな想いを込めてお届けするのがこの「もっと知りたい、時計の話」です。

前回は「GMTウォッチとはどんなものか?」「GMTという名称の背景にある、活用する際にぜひ知っておきたい「世界の時間」の仕組み」からご説明しました。 その続きとなる今回は、日新堂が取り扱っている時計ブランドの製品の中から「厳選したGMTウォッチ」とその魅力、使い方をご紹介します。


●GMT針と24時間ベゼルを備えたシンプルタイプ

まずおすすめしたいGMTウォッチは、通常の時・分・秒針に加え①24時間で文字盤を1周するGMT針と、②GMT針を読み取るための24時間ベゼル(あるいはスケール)、この2つを備えているタイプです。

GMTウォッチの中では見た目も機能もメカニズムもいちばんシンプル。それだけに操作も簡単です。日新堂が取り扱う腕時計では、「グランドセイコー」の一連のGMTモデルがこのタイプ。モデル名に「GMT」という言葉が付いたモデルは、ほとんどがこのタイプといって良いでしょう。

ふつうの時・分・秒針を、いま自分が居る場所の時刻に合わせる。そして、GMT針と24時間ベゼルで、別の時間帯の時刻を表示させる。これがGMTウォッチの基本的な使い方です。

海外旅行中は、旅行先のタイムゾーンの時間で生活します。だから旅行先に着いたら、時・分・秒針をその場所・土地の現在時刻に設定します。この旅行先の時刻を「ローカルタイム(現地時間)」と呼びます。一方、自分の家がある場所、そのタイムゾーンの現在時刻を「ホームタイム」と呼びます。

そのためGMTウォッチは「ローカルタイムに加え、ホームタイムもわかる時計」と言われています。また、2つの異なる時刻を表示してくれることから「デュアルタイム(Dual Time=2つの時刻)ウォッチ」と呼ばれることもあります。


●24時間ベゼルが回転式なら3つ目の時刻も

なお、GMTウォッチには、24時間ベゼルが固定されて動かせないものと、「動かせる=回転式のもの」があります。

24時間ベゼルが回転式の場合は、GMT針で設定した時刻との時差をこのベゼルを使って設定することで、「3つ目のタイムゾーンの現在時刻」も読み取ることができます。

ですから、ヨーロッパ大陸やアメリカ大陸など、旅行先に違うタイムゾーンがあって、その時刻もできればチェックしたい。そんな希望がある人は、24時間ベゼルが回転式のモデルを選ぶと良いでしょう。

日新堂が皆様にお届けしているモデルでこのタイプが、グランドセイコーの「エボリューション9 コレクション GMTモデル」とロンジンの「ロンジン スピリット ズールータイム」です。どちらも24時間ベゼルは回転式で、これを活用すれば3つのタイムゾーンの時刻を知ることもできます。

Grand Seiko/グランドセイコー
Evolution 9 Collection / エボリューション9 コレクション
GMTモデル SBGE283  

美しさと優れた視認性を「光の煌めき」で実現するため、ケースや文字盤など、時計の要素を平面と二次曲面でシンプルに、しかも面の仕上げをすべて、歪みのない鏡面仕上げにして構成する。これがグランドセイコー独自の「セイコースタイル」。1967年に確立されたこのデザイン文法 を守りつつ、さらに進化させたエボリューション9 コレクション の最新GMTモデル。ライトグレーダイヤルのタイプもあります。
ケース径41mm、BTIケース&ブレスレット、自動巻スプリングドライブ(手巻つき)、パワーリザーブ約72時間、10気圧防水。968,000円
※2022年7月8日(金)発売予定



LONGINE/ロンジン
ロンジン スピリット ズールータイム

1925年からGMTウォッチを製品化してきたスイスの名門ロンジン。これは2022年3月に発表された最新のGMTモデル。ムーブメントの心臓部には磁気の影響を受けないシリコン素材を採用。スイスクロノメーター検定協会(COSC)の精度テストに合格した高精度も魅力で文字盤カラーは写真のグリーンも含め3種類が用意されています。また写真のメタルブレスレットに加えてレザーストラップのタイプも選べます。
ケース径42mm、SSケース&ブレスレット、自動巻き、パワーリザーブ約72時間、10気圧防水。415,800円




●時刻設定はまずGMT針から

では、このシンプルタイプのGMTウォッチはどのように設定して、どう使えばいいのでしょうか。


ロンジン スピリット ズールータイムのGMT針も先端に三角形のインデックスが付いたタイプ。回転式ベゼルも搭載


基本的な設定はまず、GMT針の時刻合わせから行います。GMT針は普通の時分針と連動して動きます。だから普通の時刻合わせモードにし、リュウズを使ってGMT針を、表示させたいタイムゾーンの時刻に合わせます。

海外旅行中ならGMT針は日本の時刻に。また、海外の違うタイムゾーンに居る友人や取引先の場所の現在時刻を表示させたければ、そのタイムゾーンの時刻に合わせます。

なおこのとき、ふつうの時針の位置は気にしなくていいのですが、分針と秒針は正確に現在時刻に合わせておきましょう。

次にリュウズを、普通の時針だけを1時間単位で動かすモードにして、時針を今居る場所の時刻に合わせます。このモードを「アワージャンプ」と呼んでいて、普通の時刻合わせはリュウズの2段引きで、時針だけを1時間単位で動かすモードは、リュウズの1段引きで行えるものが一般的です。

これで、GMTウォッチの設定は完了です。これで今居る場所の時刻を普通の時・分針で、さらにGMT針でもうひとつ別のタイムゾーンにある場所の時刻を同時に知ることができるようになりました。

なお、この普通の時針を動かす操作を、リュウズを使わずにケース横に設けたプッシュボタンで行うタイプの時計もあります。

ところで、海外旅行をしていないときや、特に知りたい別のタイムゾーンの時刻がないとき、GMT針はどう使えばいいのでしょうか?

その場合は、GMT針を24時間表示での時間を示す針として使います。12時間で文字盤を1周する普通の時針を見ただけでは、表示が深夜の1時なのか昼の1時なのかわかりません。でもGMT針を見れば24時間制での今の時刻の「時」がわかります。


●第2時針と午前&午後表示を備えたモデル

24時間で文字盤を1周するGMT針と24時間ベゼルは、外観からひと目でGMTウォッチとわかる、アイコンともいえる装備です。

ただ、第2時間帯の時刻(ホームタイム)の読み取りは、「時」をGMT針で、「分」を普通の分針で行うので、少々慣れが必要です。また24時間ベゼルを装備したウォッチは、ダイバーズウォッチを見ればわかるように、どうしてもスポーティなデザインになってしまいます。

日新堂がお届けするGMTウォッチで、この“常識”を超えた機能とデザインを備えているのが、1755年にスイス・ジュネーブで創業し、そのときから現在まで休むことなく最高峰の時計作りを続けている名門ヴァシュロン・コンスタンタンの「オーヴァーシーズ・デュアルタイム」です。

VACHERON CONSTANTIN/ヴァシュロン・コンスタンタン
オーヴァーシーズ・デュアルタイム


「日々世界を飛び回るジェットセッター」のために誕生した「オーヴァーシーズ」コレクション。デュアルタイムは、4時位置のロック機構付きプッシュボタンは6時位置にある日付合わせ用。ブレスレットの他にアリゲーター、ラバーと2種類の交換用ストラップが付属していて、ボタンひとつで交換ができます。
ケース径41mm、SSケース&ブレスレット、自動巻き、パワーリザーブ60時間、15気圧防水。3,542,000円

このモデルは24時間で文字盤を1周する24時間針と24時間ベゼルの代わりに、12時間で文字盤を1周する、今居る場所とは違うタイムゾーンの時刻(ホームタイム、リファレンスタイム)を示す第2時針と、その第2時針が示す「時」が午前なのか午後なのかを表示する「昼夜表示(デイ&ナイトインジケータ)」を文字盤9時位置に備えています。また文字盤6時位置には、普通の時針と連動する指針式の日付表示も備えています。また、第2時間帯表示機能を使わないときは、第2時針を通常の時針の下に重ねて、時針をひとつに読みやすくして使うこともできます。

世界では今、スポーティなテイストに加えて、優雅さも兼ね備えたラグジュアリー・スポーツ(通称ラグスポ)ウォッチが大人気です。そしてヴァシュロン・コンスタンタンの「オーヴァーシーズ」コレクションもこのジャンルに属します。ただ、ラグスポウォッチで、こうしたでGMT(デュアルタイム)機能を備えたモデルは、意外なことにほとんどありません。その意味でもこのモデルは、とても貴重な存在です。


●さらに独自の機構を備えたモデルも

第2タイムゾーン(ローカルタイム)の「時」を第2時針で表示し、第2時針を使わない時は(ホームタイムを示す)スケルトンの針に重ねて普通の時計として使えるGMTウォッチ。このタイプには、さらに特別な機構を加えたモデルも存在します。

その「特別な機構を加えたGMTウォッチ」の最新モデルが、パテック フィリップ、2022年の新作「年次カレンダー・トラベルタイム 5326G-001モデル」です。

PATEK PHILIPPE/パテック フィリップ
年次カレンダー・トラベルタイム 5326G-001モデル

ホブネイル(クル・ド・パリ)装飾をケースサイドに施したホワイトゴールドケースに、アンティークカメラからインスピレーションを受けてデザインされたというブラック・グラデーションのテクスチャード・ラック・アントラサイト文字盤。上品な、しかし精悍さもあるヴィンテージ感もこのモデルの大きな魅力。
ケース径41㎜、ホワイトゴールドケース、ヌバック仕上げのベージュ・カーフスキンストラップ(ファブリック仕上げのブラック・カーフスキンストラップも付属)、自動巻き、パワーリザーブ約48時間、3気圧防水、9,713,000円


パテック フィリップは世界の時計愛好家から、メカニズムの革新性や仕上げの美しさから「機械式時計の最高峰」と絶賛されるブランド。この新作はモデル名の通り、パテック フィリップが特許を持つ、第2時針によるGMT(デュアルタイム)機能を実現する「トラベルタイム」機構に加えて、やはり同社が1996年に世界で初めて実用化した「年次カレンダー」機構を備えています。

年次カレンダーは、機能的には永久カレンダーのシンプル版とも言えるカレンダー機構。通常のカレンダーは「小の月」の月初には日付を手動で1日進める必要があります。しかし年次カレンダーは「大の月」と「小の月」を自動的に判別してくれるので、この修正の必要がありません。修正が必要になるのは年に1度、「3月1日に1回だけで済む」使いやすさが特長。そしてトラベルタイム機構も実は同じ1996年に登場した、使いやすさでは定評のあるメカニズム。

ただこの2つの機構を共存させるためには、トラベルタイムに年次カレンダー機構を制御する仕組みが必要でした。年次カレンダーの表示は、トラベルタイムの操作に連動して正確に変わります。また、ローカルタイムとトラベルタイムの両方に午前&午後表示を、6時位置のスモールセコンド表示の中にムーンフェイズ表示を備えている点もこのモデルの見逃せない魅力。

機能とメカニズム、どちらにも最高峰を求める方に好まれる特別なGMTウォッチです。

※掲載の価格は2022年7月1日現在のものです。
※価格は全て税込表記です。