もっと知りたい時計の話 Vol.52

さまざまな時計、その素晴らしい機能や仕組み、その時計が生まれた歴史などについて、もっと知って楽しんで頂きたい。 日新堂のそんな想いを込めてお届けするのがこの「もっと知りたい、時計の話」です。

暑い日が続きますが、皆さんはこの夏どんな時計を腕に日々を過ごしていますか? 今回はそんな夏にぴったりの「どこにでも、安心して着けて行ける時計」の話です。

夏は時計にとっていちばんの「厳しい季節」。なぜ厳しいのか? それは時計にとって「最大の敵」である水や水蒸気にさらされる機会が他のどの季節よりも多くなるからです。機械式でもクォーツ式でもスマートウォッチでも水や水蒸気は時計にとっていちばん避けなければならない「最大の敵」。水は時計の内部にほんの少し入っただけでも、修理がほぼ不可能な深刻な故障につながります。

でも夏はどうしてもたくさん汗をかきますし、少しでも涼しくなりたいという気持ちもあるので、水と親しむ機会が増えます。水遊びやプールや海水浴、水辺のリゾートへの旅行やマリンアクティビティーなど。そんなとき「どこにでも、安心して着けて行ける時計」としてぜひ選んでほしいのが、ふつうの時計より防水性がひとまわり高い、日常生活強化防水時計と呼ばれるもの。そして潜水用のダイバーズウォッチ(略称ダイバーズ)です。

ダイバーズの方は、ケースが大きくて厚くて重いという印象から敬遠してしまう方も多いかもしれません。ただそれはダイバーズの中でもごく一部、エアタンクを背負って行うスキューバダイビングや、プロダイバーズが行うヘリウムを空気に混ぜた「飽和潜水」と呼ばれる特殊な潜水に対応したものの話です。

ケース径が40ミリ前後で、ケースの厚さも15ミリ前後と “薄めで軽めで小さめ”の、ビジネススーツに着けても違和感のないタイプのダイバーズも数多くあります。「どこにでも、安心して着けて行ける時計」としておすすめしたいダイバーズは、そんなモデルです。

ところで、時計の防水性にはどんな基準があって、その性能はどのくらい違うのでしょうか? 経済産業省が定める、工業製品が満たすべき機能や性能の基準「JIS(日本産業)規格」では時計を防水性で次の5つに分類しています。

JIS(日本産業規格)が定める防水時計の分類(日本時計協会のHPより)

下からひとつ目は防水性がまったく期待できない、できるだけ水とは無縁の環境で使いたい「非防水時計」。次に、日常生活での汗や洗顔のときの水滴、雨などに耐えられる「日常生活用防水時計(JIS 1種防水時計)」。そして、水に触れる機会の多い水仕事や水上スポーツで使える5気圧防水で、その上級に水上スポーツやスキンダイビングにも使える10気圧防水&20気圧防水の「日常生活用強化防水時計(JIS 2種防水時計)」があります。

これより防水性が高いのが、JIS規格で「潜水時計=ダイバーズ」に分類される時計がまだ、さらに2種類あります。そのひとつは、ダイビングなど本格的な潜水に対応した「潜水時計(JIS 1種潜水時計)」。もうひとつが、ヘリウム混合ガスを使った飽和潜水に対応した「飽和潜水時計(JIS 2種潜水時計)」です。

さて今回、夏にぴったりの「安心して、どこにでも着けていける」防水時計としてオススメしたいのは、JIS規格のこの分類の中の二つです。

まず、そのひとつが「JIS2種防水時計」という分類に入る「日常生活強化防水時計」です。ただ、このカテゴリーに入る時計でもその防水性にはかなり大きな差があります。そこで購入するときにぜひ確認して頂きたいのが、防水性の表記が10気圧(=100m)防水から20気圧(=200m)防水です。

実はこのスペックのものは、時計の中でもいちばん水がケースの中に入りやすい「リュウズ」の部分がほぼすべて「ネジ込み式」です。これはリュウズを押し込んで回すとケースと一体化する構造になっているもので、しっかりねじ込まないといけません。


これがネジ込み式リュウズ。リュウズとリュウズパイプの外側にネジが切られていて、ネジ込むことでリュウズがケースと一体化します。

そしてもうひとつが、時計店の「ダイバーズ」のコーナーなどで売られている“薄めで軽めで小さめ”の「JIS第1種潜水時計」です。メーカーのスペック表記で「空気潜水(スキューバ潜水)対応」と表記されていたりするモデルです。

このタイプはほぼ間違いなく「ネジ込み式リュウズ」が採用されているだけでなく、潜水時間をマーキングするための「逆回転防止ベゼル」も装備しています。

クォーツ式なら価格も手ごろでケースの厚さも薄く着けやすいものばかり。最近では機械式でも手頃な価格でしかも薄型のモデルも登場しています。

新しくダイバーズを購入するなら、メタルブレスレットではなく、着け心地が軽快で見た目もカジュアルなラバーストラップやファブリックストラップの付いたモデルを選んでみるのもどうでしょう。解放的な気分でダイバーズを楽しめると思います。