もっと知りたい時計の話 Vol.50

さまざまな時計、その素晴らしい機能や仕組み、その時計が生まれた歴史などについて、もっと知って楽しんで頂きたい。 日新堂のそんな想いを込めてお届けするのがこの「もっと知りたい、時計の話」です。

太陽が地平線から登ってくると朝になり、太陽が空のいちばん高い位置になると正午に。そして地平線に沈むと夜になる。みなさんがお持ちの時計は、この「宇宙の法則」をシミュレート(機械的に再現)・表示してくれる精密機械であることをご存知でしょうか。

昼夜の移り変わりばかりでなく日付の移り変わりも再現・表示してくれるのがデイト(日付)機能。これに加えて週の曜日の移り変わりも再現・表示してくれるのがデイ/デイト機能。さらに1年間の月の移り変わりまで再現・表示してくれるのがフルカレンダー機能です。

そしてフルカレンダー機能を進化させたのが、大の月と小の月に合わせて日付や曜日を自動的に調整してくれて、閏年による1日の追加があるときもある「2月の最終日」だけカレンダーを修正すればいいのがアニュアル(年次)カレンダー機能です。4年間に1度、閏年の年だけ2月の最終日に日付を修正すればいいのがセミ・パーペチュアルカレンダー機能。さらにこの4年に一度やってくる閏年を自動的に判別し、2月の最終日を自動的に調整して、時計が動き続けている限り100年間はカレンダーを修正しないで再現・表示してくれるのがパーペチュアル(永久)カレンダー機能です。最近では、いま世界で使われている暦・グレゴリオ暦のもうひとつの決まりである「400年に1回は閏年をキャンセルする」という壮大な決まりに対応した「セキュラーカレンダー」機能を備えた時計も登場しています。

また、これ以外に時計が再現・表示してくれる「宇宙の法則」にはもうひとつ、とても魅力的なものがあります。それが天文表示機能。これは太陽や月、太陽系の惑星の動き、星座の動きなどを文字盤に表示するものです。

それにしても、なぜ時計に天文表示機能が組み込まれているのでしょうか。「一日は24時間。一年は365日」というように、時間や時刻、暦という概念が揺るぎないものになっているいまのわたしたちには、太陽や太陽系の惑星の動き、星座の位置など「時間とは無関係なもの」だとも思えます。ところが、時間や時刻、暦という概念は、そもそも人類が太陽や月、太陽系の惑星や星座の動きを長年観察するなかで考案されてきたものなのです。


現在の天文時計の分野を牽引する存在のシチズンは、1986年に最初の星座盤モデル「コスモサイン」を発売。(写真は2024年6月20日に開催された「CITIZEN」ブランド時計 100周年記念イベントの展示より)

このコラムの150年前の「時の大事件」(Vol.26)でもご紹介したように、「一年を365日として、それを12月に分けて、4年ごとに閏年を設けること。1日を定時法の24時間とする。」というグレゴリオ暦がようやく日本で使われるようになったのは、1872年(明治5年)12月3日(=明治6年1月1日)のことです。それまで人々が使っていた時間、時刻などの概念、そしてそれを定めていた暦はまったく別のものでした。

ところが世界では、機械式時計の設計と製造に革命的な進化をもたらした偉人として名高い、イタリアの医師、天文学者、時計技術者のジョヴァンニ・デ・ドンディ(1330〜1388)が設計・製作し、今は論文のかたちで残されている時計「アストラリ」には、すでに複雑な天文表示機能が備えられています。

時計王国のスイスや日本にも、天文表示機能を搭載した素晴らしい時計がいくつもあります。こうした時計の文字盤の精密さ美しさは特別なので、天文好き、時計好きの方には一見をおすすめします。


シチズン CAMPANOLA(カンバノラ) コスモサイン コレクション AO4010-18M CAL.4398 天空の星の動きを、時刻にあわせて時計とは逆まわりに回転する文字板上にリアルタイムで再現する。