もっと知りたい時計の話 Vol.46

さまざまな時計、その素晴らしい機能や仕組み、その時計が生まれた歴史などについて、もっと知って楽しんで頂きたい。 日新堂のそんな想いを込めてお届けするのがこの「もっと知りたい、時計の話」です。

ほぼ1年前の2023年4月15日に「もっと知りたい時計の話 Vol.21」でもご紹介した、世界最大唯一無二の「時計祭り」こと「WATCHES & WONDERS GENEVA(ウオッチズ&ワンダーズ ジュネーブ)」、略称WWGが、今年2024年も4月9日から15日の7日間、ジュネーブ国際空港に隣接する国際見本市会場「パレクスポ」で開催されました。


パレクスポのメインエントランス。一般入場券は事前のネット限定販売で、1日チケットは大人ひとり60スイスフラン(約1万円)でした。

今年は「ロレックス」「パテック フィリップ」を筆頭に「タグ・ホイヤー」や日本の「グランドセイコー」を含む、2023年よりさらに多い54の時計ブランド(メゾン)が出展。1週間の期間中には、世界中から約5700人もの販売業者、約1500人のジャーナリストを含む、2023年より約14パーセントも多い約4万9000人が訪れ、世界初公開となる新作時計の素晴らしい世界を堪能しました。

WWGでも最も人気で、一般公開日に多くの人を集めたのが、ロレックス、そしてパテック フィリップのブース(写真上)。ソファも多数用意されています(写真下)

そして今年2024年、スイス時計の発祥の地・ジュネーブで開催されるこの世界最大の時計フェアはさらに進化し、このマガジンをご覧いただいている「時計が大好き」な皆さんにとっても、見逃せない参加型のイベントになりました。

このWWGの前身は、1991年から2019年まで、同じ会場で開催されてきた高級時計見本市「Salon international de la haute horlogerie(サロン インターナショナル オート オルロジュリ(通称ジュネーブ・サロン)」です。ただこの「サロン」はクローズドイベントで、そこで公開される新作時計を目にすることができるのは、世界でもごく一部の時計業界関係者だけでした。


WWG2024はパレクスポの展示会と「IN THE SALON」と市内各地で行われるさまざまなイベント「IN THE CITY」の2本立て。ジュネーブ・コルナヴァン中央駅にはこんなのぼりが立てられました。

しかし2020年に構想され、コロナ禍によるオンライン開催を経て2022年からリアル開催となったWWGのコンセプトはその正反対「あらゆる人が参加して、時計という素晴らしい機械の魅力を堪能できる時計フェア」です。

そして今年2024年、このコンセプトがついに実現しました。7日間の開催期間のうち3日間は、オンラインで入場チケットを購入すれば誰でも入場でき、参加した54ブランド(メゾン)の新作時計を間近で眺めて楽しむことができます。

さらに7日間のうち前半の5日間は、時計ブランドがブースを構えるパレクスポの展示会場ばかりでなく、市内の時計博物館や高級時計ブランドの直営ブティック、さらに市内に設けられた特設会場などで、子どもから大人までジュネーブを訪れた誰もが楽しめる、時計に関するさまざまなプログラムが開催されました。


4月10日開催のさまざまなイベントを紹介するWWGの公式ページ。時計に関連するさまざまなプログラムが用意されています。


ジュネーブ市内、モンブラン橋の近くの特設テント会場で行われた「時計師体験教室」(4/9〜13)。子どもから大人まで、時計学校の生徒の指導で時計組立を体験しました。

ではなぜ、時計業界の関係者のためのクロージングイベントだったこの「世界時計祭り」が、あらゆる人がオープンで楽しめるイベントに進化したのでしょうか。その背景には「スイス時計の故郷がジュネーブである」ことをアピールし、名門時計ブランドの本社ファクトリーや直営ブティック、さらに市内の時計博物館など時計に関するあらゆる施設を、世界中の人々に知って楽しんでほしいという意向からこのフェアを支援している地元の自治体、ジュネーブ市とジュネーブ州の存在があります。

来年2025年のWWGは、出展する時計ブランドもさらに増え、市内で開催される、誰もが参加できる時計にまつわるさまざまなプログラムもさらに増えるでしょう。もしこのマガジンをお読みのあなたが「スイス時計の歴史や神秘をもっと知りたい」とお考えなら、ぜひこのWWGを訪れてみてはいかがでしょうか。

All Photos©Yasuhito Shibuya 2024